観光予算を400億に!(01/5/8)


 経団連主催の「観光を考える会」というのがあった。

 お歴々が来ておられたが、
いつまでも「観光は大事です」みたいな奇麗事ばかり話してても仕方がないと思ったので、
発言をした。

 「わが国の国際観光予算を400億円に!」


 「辛いのくに紀行」にも書いたが、日本国の観光予算はわずか30億円しかない。
 ほぼ全てが国際観光予算で、国内向けはほとんどゼロ。
 まあそのことの善し悪しは別に、前者にしぼって考えるとしても、
たった30億じゃ、一部の関係者がいくら頑張っても、国際観光振興なんてどだい無理な話だと思う。

 言っておくが、民間はあくまで短期の経済原則でしか動かない。
 まだ日本は、新幹線の切符にすらローマ字表記がないような現状だ。
 地域だって、海外でPRするより近所でやった方が効果的であれば、そちらを選択するに決まってる。


 さて。
 ここで言う「400億」は、まんざら根拠のない数字ではない。
 日本を訪れている外国人は年間410万人。
 北海道から沖縄まで、富士山も金閣寺も東京ディズニ−ランドや秋葉原も全部合わせて、香港1都市の半分にもおよばない情けない数字だ。
 世界35位。
 因みに36位はサウジアラビア、37位はマカオだというから笑わせる。

 で、その410万人が1人平均10万位消費し、消費税もあわせてその10%が税収になっているとすれば、410億円。
 つまりは、経済再生策の一つとして、
なぜそれを再投資しないのかと言っているだけのことなのだ。


 で。
 以上のような観光予算の大幅増額というのは、
僕はそれ自体がとても立派な「政策」だと思っているのだが、
その意義はだいたい以下の6点に要約できる。

 その1。
 国際観光は、ある程度までは、やればやっただけの効果が出る。
 400億を投資して、例えば外客数が1000万人に増えれば、差し引きで税収は230億円増になる。
 いまどき珍しい、確実な税収増が期待できる投資分野だ。

 その2。
 観光の裾野は広い。
 少なくとも、ヒトケタ、フタケタも額が違う公共投資よりは、はるかに効率的な雇用確保が期待できる。
 特に若いヤツらの。

 その3。
 国際観光は「富める国」から「貧しい国」に行く方が快適だ。
 なぜって、体感する物価が安いから。
 つまり、「富める国」でなくなればなくなる程、国際観光は有利だ。
 このままデフレが進み、日本経済がとことん落ちぶれれば、そういう時代がこないとも限らない。
 そんな万一の時が来た時の「保険」として、国際観光のショックアブソ−バ−機能は捨てがたい。

 その4。
 とはいえ、日本はまだまだ豊かだ。
 その資金をちゃんと使いさえすれば、絶対に国際競争には勝てる。
 ましてや物価が安い国、例えば中国に対してであれば、
一定の資金で、ちょっと日本では考えられない規模でのPR事業が、まだまだ可能である。

 その5。
 日本国の人口は、これからどんどん減っていく。
 日本人だけを相手にしていては、全ての地域経済が先細りになる。

 その6。
 文化や観光はある意味、最も有効な安全保障政策だ。
 少なくとも、同額のミサイルや戦闘機を買うよりはだいぶマシな国防戦略である。



 と言うことで。
 これからは30億を35億にしようみたいなセコイ話ではなく、400億でどんな国際観光振興策が打てるかを考えて行くべきだと思う。

 で、僕が考える支出予算は以下の通り。

 まず現状の30億は、そのほとんどがJNTO(国際観光振興会)の維持費だ。
 せめてこれにマトモな事業費を与える。
 15の海外事務所に平均1億ずつ。
 ただしこれはあくまで「平均」であって、各国にあったメディア対策やエ−ジェント対策が提案できない事務所には出さずに、他の所にまわしたり積み立てて行ったりする。
 本部にも20億。
 国際宣伝の他、最も重要と思われる地域に資金投入したり、事務所の増員、増設に使う(例えば現状では上海にすら日本事務所はない)。
 以上、JNTO関係費にまず65億。

 次に。
 JNTOの15の拠点、せいぜい5-60人のスタッフだけでは、世界へのPRは無理だ。
 大使館・領事館にもPRや文化紹介費をつける。
 1つ1200万で、ざっと25億。
 これで海外広報の裾野はものすごく広がる。
 日本人会なんかと協力して知恵をしぼれば、その程度の資金(月平均100万)でも、世界中で色んな草の根型の広報事業が可能だろう。

 さらに、広域地方圏へのPR費を10億。
 沖縄を1つと数え、1地方圏に1億ずつ。
 地方からの海外発信力はこれで飛躍的に高まるし、北海道・沖縄の振興にも大きく役立つ。

 ついでに、国としての広報や魅力PRに30億。
 これについては、内閣府かどこかの管理にした方がいいかも知れない。
 で、国としてのTVスポットなどの費用は、JNTO本部分と合わせ、当面、約50億円となる。

 ここまでが、いわば「広報宣伝費」で合計130億円。
 全体の約3分の1だが、
やり方次第で、ソニ−やパナソニックの海外宣伝程度の露出は十分可能な金額だと思う。


 次の140億は、流動的に使うべきだが、まず2-3年は外国語表示などのソフト充実にあてる。
 まず各府県・政令市、世界文化遺産や国立公園、国際観光モデル地区に指定されている場所に1億ずつで、100億。
 旧運輸省や外務省、内閣府にばかり任せるのはセンス的にも、過去の行状からしても危険なので、
この金は、できるだけ旧自治省や文化庁・環境庁が中心に管理する。
 そして交通機関に30億、全国1000のホテル・旅館にも100万ずつ予算をつければ、アジア言語を含めた外国語表記の問題などはすぐに解決する。


 あと残る3分の1、130億円については、まずは「先進国・韓国」の真似。

 外国語案内員を200箇所のポイントに平均5人(英・中・韓)ずつ配置し、1人年200万として20億。
 旧文部省の管理。

 で、残る10億を国宝などの修復。100億を目玉となる史跡の復元や施設の建設に当てる。
 管理は文化庁などだが、前者については外国人観光の視点から見て重要なものだけに特化する。
 後者については、2-3年がかりもアリとして、1点豪華主義でいくことが重要だろう。



 まあこれだけやれば、外国人観光客は必ず何割かは増える。
 で、この分だけで見れば、経済は絶対に拡大基調に乗る。

 ただし、返す返すも信用できないのは役人や外郭団体のとんちんかん振りだ。
 放っておけば官僚の坊ちゃん同士の、乏しい経験の中での密室談義となり、
結局はD通とかのハイエナ連中の草刈り場になることが目に見えている。

 で、ちゃんといいお金の使い方をしているかどうかを、首相直轄のHPなどで「積極的に」公表していくことが不可欠になる。
 ポイントは、「支持率」によって各省庁を競わせること。
 それと糸井重里でもテリ−伊藤でも小室哲哉でもいいが、
柔らか頭で、プロデュ−ス実績があり、ちゃんと国民が分かる人たち数人からなる「監視委員会」みたいなのを置いて、分かりやすく成果を検証・広報。
 かつ彼らの意見を十二分に取り入れて、
官邸主導で1年ごとに予算配分を大きく見直して行くことが必要と思う。


 僕の「政策」は以上。

 別にこんなことは、夢物語でも何でもないと思っているのだが。