大阪のオリンピック招致を総括する(01/7/25)


 夜10時から、OBP(大阪ビジネスパ−ク)で開かれた大阪オリンピック招致の最終集会に出席した。

 大阪オリンピックの招致委との関係では、
数年前までは国内の作戦会合に参加したり、
モナコでのIOC委員が多く集まる会合に展示ブースで協力したこともあった。
 依頼され、海外広報パンフやCDロムに、彼らのシンボルマークを入れたのも、多分ウチが一番先だった。

 が、その後、IOC委員たちへの「疑惑」が表面化したこともあって、誘致方針が大転換。まんざら知らない仲でもないのに、いつしかかなり縁遠い存在になってしまっていた。

 北京の票が割れることを阻もうとする政治力みたいなものがあったのかどうかは知らないが、
特に数か月前の「辞退勧告」以来の活動は全く下火。
 99.9%の大阪市民は負けを意識していたと思う。

 が、それでも2000人くらいの人が集まって来ていた。
 まあ、半分くらいは市役所や議会や関連団体の人なのかも知れないが、
 「やっぱりこの街はエエ奴多いな−」っていう感じはした。

 さて。
 僕がこの会に参加したのは、
今日をボトムに、もうちっと大阪や関西を何とかしないといけないという意味で、
オリンピック招致の最期をきちっと見届けたかったからだ。

 頑張って来られた関係者の労はねぎらってあげないといけないと思うが、
実は結果については、反省すべき点がてんこ盛りだ。

 で、この際だから以下に、僕が一市民、一団体職員として感じてたもののいくつかを紹介する。


(その1)動機は純粋だったのか?

 スポーツへの純粋な愛情をもってオリンピックに立候補する都市など1つもないというのは、ある意味、当然のことなのかも知れない。
 が、大阪市の場合には、特に土建行政丸出しの、何とも言えないキナ臭さがあった。
 純粋に頑張られた人には申し訳ないが、そもそもこのオリンピック立候補を提案してきた大きな勢力の一つは、何でもいいから都市計画や建設工事をやりたかったというだけのことだったんじゃないか?


 (その2)田舎侍、蛇におじず

 大阪市役所には今だ、アジアで東京の次の大都会は大阪だと思ってるような人たちがかなりいる。
 彼らのセンスは「東京でやったんだから大阪でも、当然オリンピックを開くべきやんけ!」みたいなことだ。

 「ユニバーシアードぉ? そんな神戸や福岡がやったような小さな大会、なんで大阪でやらにゃならんのぉ?」
 「アジア大会? そんな広島がやったようなもん、あかんあかん。」
 で、結局来たのは「東アジア大会」(笑)。
 JOC関係者や選手やボランティアやった知人に感想を聞いたが、これまたさんざんな評価で、「最後に東アジアで正確な運営を世界に見せつける」作戦も大空振りに終わった。


 (その3)都市格

 大阪の合言葉の一つは「都市格の向上」。
 言い換えれば、北京やパリなどに比べれば、だいぶ都市格が低いってことだ。
 ならばなぜ、京都や神戸や奈良や・・に、頭を下げて真摯に応援や協力を頼み、関西全体で戦おうとしなかったのか?
 旧態依然たる大阪モンロー主義と、府庁&市役所の低レベルのライバル意識。
 あとはセクションの壁!
 だいたい、市役所の中も燃えてないのに、外部が燃える訳ないよ。

 で、かような田舎者ぶりに気づかず、二流エリートのプライドも捨てられなかった大阪市は、
たったそれだけの理由で、
次に書くような、いくつもの同種の失敗を繰り返してしまった。 


 (その4)孤高の招致活動

 市民の盛り上がりは、動員モノを除けば、かなりゼロに近かった。
 噂話だが、「モスクワ応援市民ツアー」には、たった13人の参加者しかなかったという。
 泡沫候補の選挙事務所じゃあるまいし、こんな低調な誘致活動しかできなかった都市が、かつてあっただろうか?

 市民は皆、それなりにイイもの、熱い部分を持ってたはずなのに、ただ単に、「のぼり」や「ポスタ−」を眺めてただけだ。
 見るに見かねた経済人たちが「勝手応援団」を作って盛り上げを図り、一定の元気の受け皿は出来たものの、
それだけで、国あげて取り組んでる北京なんかと戦うのって、いかにも無謀だよ。

 なぜ市長は早い時期に在阪TV局や吉本や・・・の雰囲気づくりに影響力ある人たちの元を訪ね、頭を下げなかったのだろうか?
 和田アキ子だって、藤原紀香だって、つんくだって、なんとかだって、ひと肌脱いでくれる出身者は市外にも一杯いたはずだ。
 まあどうせ、取材したかったらさせてあげるとか、吉本みたいな品のないのは大阪の恥(こういう役所系インテリが実に多い)っていうような感覚だったんだろうな。


 (その5)続・孤高の招致活動

 孤高の招致活動には、財界その他もほとんど参加の場を与えられなかった。
 一言で言えば、財界は単なる金ヅル扱い。
 全てはブラックボックスの中で進行し、セレモニーや分担金みたいな時にだけ要請受けても、そんなの誰も燃えないってば。
 ただでさえ、例えば松下やサンヨーやシャープなんていう企業は、
関西活性化以上に海外市場が重要なんだから。

 僕らも含む同種団体間でも招致委の活動が話題になることは、特にここ1ー2年は皆無だった。
 例えばおとといには、誰もモスクワのことなど気にかけず、関西の10くらいの中核団体が集まって「懇親ボーリング大会」をやってたくらいなんだから(笑)。


(その6)で、結局カネがない

 結局、大阪市は馬鹿みたいな埋め立てや競技場や体育館には金をつぎ込んだが、招致費や盛りあげのための費用は微々たるもの。
 招致用のHP一つを見ても、例えば北京との差は歴然だ。
 「都市格」の差を考えれば、唯一の善戦の芽は、物価や人件費比で北京程度のソフト費用をつぎ込むことだったのだが、
現金ベースであっちよりもずっと貧乏だったっていうんじゃ、そりゃ話にならんよ。

 そんな程度の意気込みで、よく立候補やら誘致活動やらをやって来たもんだって気がする。
 スタッフではなく、システムやリ−ダ−シップに大きな問題があったと言わざるを得ないよ。
 市長は次回以降も・・みたいなことを言っているが、今回のようなやり方なら、悪いが何回やっても同じだよ。

 で、最後には大阪市の招致局が海外旅費を不正請求して接待費だかを捻出。
 さらには、今日も敗戦決定を10分間も誰も気づかないというおそまつな演出が全国放映されるっていう、情ないオチがついてしまった。
 (しっかりしろ、D広!)

 (惨惨惨)

 ただでさえ関西人は阪神タイガースのせいで、負けることに慣れっこになっている。
 だけど、もはやそれをギャグにして、笑い飛ばしてるだけじゃ駄目だ。
 大阪市役所や市長の敗因は何だったのかを、
僕たちも含めて、それぞれの立場でよくよく考えて行かないと、
大阪や関西の未来は、まさに「負け癖」のドツボの中だと思う。