小泉訪朝(02/9/16)



 日本国民は、小泉訪朝に予想以上の成果が上がったと、素直に認めるべきだと思う。

 北はもう、恐らく「脅威」ではない。
 来年からは防衛費など半減させてもいいくらいだ。

 なぜ民主党、特に横路氏がその点を主張し、
できれば防衛予算&思いやり予算を10年間で現行の1−2割に削減していくビジョンを示して、
その分を財政再建や平和的安全保障(含・観光)に当てて行こうとしないのかがわからん。


 もちろん。
 今回の「成果」の大きな要因が、金正日側の政策転換にあったことは言うまでもない。

 世界の「開放」情勢への流れはもはや変わるハズもなく、
ブッシュからは「悪の枢軸」扱い。
 金大中政権後は韓国の姿勢にだって変化がおきるかも知れない。
 そんな中、まずは中国、ロシアに擦り寄り、次は日本へと、
対米プロテクト網を組んで来た。

 金正日が心底恐れているのは当然、何してくるか分からない「気狂いブッシュ」だ。
 そのためには、日本に「拉致」の真相を語ることなど、そう大きなことではないという判断だったのだろう。
 今の小泉政権の窮状を知りつつ、「賭け」に乗って来るだろうという点も、もちろん計算の上。
 日本側の「カード」がもっぱら「拉致」に集中していたことを、相手はよく知っていた。

 で、真相公開&謝罪→日本側の謝罪&調印に至る、という部分についてが第二の「賭け」だったのだが、
両者にとっては「あれでよかった」というか「それしかなかった」というのが真相だったと思う。

 作・演出は例によって金正日だったのだが、かなり見事なものだった。


もちろん、「拉致」の被害はとても痛々しい。
 遺族の気持ちはよく分かる。

 だが、不謹慎だから誰も公に指摘しなかっただけで、
そうなって「いた」ことは十分に予測できていたことだった。
 殺害されていたのは、運動やメディアで有名になった人ばかりだから、余計に痛々しい。

 金正日がそれを指揮したのかどうかは永遠の謎だが、
日本軍や赤軍派、オウムに至るまで「組織の狂気」というのもよくある話で、
時計の針が止まったままのかの国にあっては、当然、ありうること。
 いずれにしても金正日は、日本の反朝感情を契機に、国際世論を背景とした軍部の粛清に踏み切る腹なんだろう。


 尊い犠牲者だったと思いたい。

 有本さん父は「アメリカと制裁を!」という言葉を発せられた。
 いちいちそう言いたい気持ちはよく分かる。

 が、自分の娘の敵討ちで戦争しろ! というのは
残念ながら、かなりの暴言だ。

 反朝ムードが高まることは避けられない所なのだが、
ならば、9・11後にブッシュを非難した米国人を好ましいと思うことも、やめなければいけなくなる。

 怒りを覚えるなら、
かつてのアジアでの残虐行為などに対して「いつまでそんなこと言ってるの?」
みたいな態度を取ることについても、
同時に考え直した方がいいと思う。