シ−ガイア倒産(01/2/24)![]()
講演のようなもので、広島に出張した。
せっかくの機会だったので、週末から現地に入り、福山の広島県立博物館、尾道を見学。
しまなみ海道や愛媛県の内子、別子にも足を伸ばした。
仕事がら、地方出張の時はしばしばこういうパタ−ン(ほとんどは自腹!)なのだが、
有名観光地以外の所では、大抵「るる○」のような自治体観光の提灯雑誌を買うことになる。
で、いつものことながら驚かされるのは、
どこの地方にも、
信じられないような規模と数の「観光施設」が出来ていることだ。
もちろん、旅行者の方からすれば、全国の「観光施設ブ−ム」は別に悪いことではない。
日本列島はある意味、バブル期を経て、ものすごく「魅力的」になった。
また地方は、ものすごく「リッチ」になった。
今回もしまなみ海道の某島には、バカでかい美術館とテ−マパ−クのようなものがあり、
人々は皆、僕なんかよりはずっとデカイ家に住んでいた。
だけど、往復2万近い「橋代」を払って、そこに二度三度と足を運ぶ人が、そう多いとはとても思えないな。
で。
まず第一の問題は、あまりにも多くの地域が「観光」、すなわち人に来てもらい、かつ満足を与えるという仕事を、あたかも簡単なもののように考えすぎているんじゃないか、ということだ。
人を楽しませる、満足させるってのはものすごく大変なこと。
お笑い芸人は話術に、料理人は一片の肉の焼き方に、歌手ならばちょっとしたこぶしに、メ−カ−ならたった一つの商品に、それぞれの命をかけてお代を頂戴してるんだもの。
で、はっきり言えば観光の場合はその成否が、地域の素質、つまり自然とか歴史とか交通とか流行の集積などの要素にものすごく左右される。
田中一郎さんがそうは簡単にキムタクにはなれない、あるいは牧場青年がいくら努力しても星飛雄馬にはなれないのと同じことだ。
その意味で、ちょっとした「観光」の資質があると思えるのは、せいぜい1つの県で数地域。多くても、全国で150市町村程度だろうな。
それと、明らかに、マクロ経済の中でのボリュ−ム測定がまちがっているよ。
一体全体、誰が年中、そんなに「観光」なんかしてるんだ?
関西の場合は各地域に、「どうせ観光魅力では京都や奈良や神戸にはかなわない」という気持ちや、
「お上には(まあできるだけ)頼らない」という美意識みたいなものがあるから、
よくも悪くも、ほとんどの地域が観光には冷静で、過度の期待など持ってはいない。
その分、国の金を取ってくる(取り返してくる)ことに対しても、必死さに欠けるきらいがある。
だから余計に他地域の「繁栄ぶり」に違和感を覚えてしまうのだろうけど。
で、第二の問題は、行政主導の施設に、「つくる」行為自体が目的だったとしか思えないものが、相当ある、ということだな。
つくづく、こんな、田舎に厚すぎる行政は一体いつまで続くんだろう? もう、この辺で十分なんじゃないか? っていう気がするな。
霞ヶ関や理科系の自治体マンのプライドを満たし、
建築家と呼ばれる人々のマスタ−ベ−ションを許し、
議員や業者を「活性化」させることが目的だったというふうにしか見えない施設が、
あまりにも日本中に溢れすぎた。
これでは、ラッシュとストレスにまみれて働く都市住民があまりに浮かばれないし、金だって、いくらあっても持たないよ。
そんなに余裕があるなら、なぜ減税しない? と考えるのが、どう見ても正論で、
そんな金の使い方しかできない奴、あるいはそんなものしかつくれない馬鹿者を養うために、
都市住民たちは、ケツの毛を抜かれるみたいに税金を収奪されている訳だ。
当然、全国津々浦々にできる施設は、「○○村」だとか「なんとかピア」だとか、皆、似たりよったりのものになる。
そんな所のリピ−タ−になるのは、地元のガキやじい様、ばあ様くらいのものだ。
まあその意味では、昔の「藩」っていうのは実によくできていたよね。
各地の特色ある文化形成に「藩」が果たした役割は、とても大きいと思う。
これからの観光地は、できれば、そのくらいの数と範囲で、もうちっと総合的に、ちゃんとした特色を打ち出していく方がいい。
今回行った所では尾道や内子みたいに。
まあそんな旅の最中、広島のホテルで宮崎シ−ガイア倒産のニュ−スを聞いた。
予想されていたことであり、「よくぞ今ごろまでもった」というのが、僕の正直な感想だった。
で、当然第三の問題は、それぞれの施設をつくった後に関するものだな。
テリ−伊藤の「だから東京都民はバカなんだ」を読むと、
東京都の財政危機の原因はバブル期のバカみたいな施設造成とその「おもり」にあったということが、今さらながらによく分かるのだけれど、
まあむしろ今後は、こっちの方の問題が地方を滅ぼすことになるんだろうな。
これからはますます価値観は多様化し、遊びのネタは豊富になり、おまけに人口が減っていく。
大都市近郊に立地しており、よくも悪くもコンセプトそのものが「借り物」のディズニ−ランドやUSJなんかを除いて、
これからは大小かなりの施設が、各地域のお荷物になっていくんだろうと思う。
その意味では、この間、自治省(前にも言ったけど、何で「自治」が「省」なんだ??)なんかがやって来たことは、相当ひどいことだよ。
いつも悪者になるのは国土交通省だけど、道にはまだ当然使い道があるし、国土の有効利用を考えた展望も描けるもの。
さて。
全国総観光地ム−ドを先導して来たのは、まさに九州だった。
ヤル気マンマンの人が多いのを、ものすごく羨ましく思うこともある。
しかし今や、ハウステンボス、福岡のダイエ−関係の施設など、もうかなり痛々しい。
ハウステンボスの全盛期に前社長の講演を聞いたことがあるが、正直な感想としては、ちょっと「誇大妄想」気味でオカシイ人じゃないかと思った。
その通り、彼は神には近かったかも知れないが、やはり神ではなかった。
またある時、ダイエ−のホテルシ−ホ−クにチェックインしたら、「朝、新聞お入れしますか?」と聞かれたので「○○新聞」と言ったら、何とその場で120円とられた。
なんぼなんでも、そういうことまでするなよ−。
あと少し前だが、アジアからの観光客受け入れで有名な別府の某大型ホテルにも泊まってみたことがあったな。
当時は韓国がまだ経済危機だったためか、
あるいは彼らがもうそこを「卒業」してしまったからなのか、
秋の金曜日の夜9時台にもかかわらず、5つくらいの風呂全て回って、6人のお客にしか会わなかった。
で、調子に乗って、誰もいないデカイ風呂で「潜水」していたら、何とサウナの中から「6人目」のガキが出て来た。(恥)
もちろん。
九州の全てがダメになっていると言うことじゃない。
九州が日本有数の観光ディスチネ−ションであり、日本の観光では最先端を行っていることも確かだ。
福岡は今や東京以上に刺激的な街だと思うし、長崎・宮崎・鹿児島は「東京文化」「新幹線文化」に毒されず、独自路線を行ってる感じがいい。
阿蘇の景観は世界に類を見ないし、久住には永住してもいいと思うくらいだ。(シャレのつもり)
きっちりしたソフト重視戦略を持っている湯布院や、大分の「一村一品」運動なども、当然スゴイと思う。
最近有名になった黒川温泉は、実に基本的な所をよくやっていると思うし、柳川なども半日観光地としてよくできている。
行政や地域リ−ダ−は「ハコモノ」以外の分野でも、もの凄く頑張っている。
結局、「持続可能な観光」に取り組んでいるかどうか、
あるいは「ハコモノ楽天主義」になっていないかどうかというあたりが、
勝負のポイントだったんだろうね。
今にして思えば、しごく当たり前のことなんだけど。
シ−ガイアについては、これから知事やら社長やら銀行やらの責任は問われていく訳だけど、
問題は当然、彼らだけにあった訳じゃない。
むしろこれからのことを思えば、
彼らを乗せたり、コンセプトワ−クなんかをやった広告代理店や「なんとか研究所」みたいなのの名前もしっかりと公表し、
二度と「ヤリ逃げ」や「地方だまし」ができないよう、
ブラックリスト化していくことも重要なんじゃないかという気がする。
それにしても。
ビジネスには当然、失敗もある訳だけど、
地道な商売で財をなした人や会社、あるいは大銀行や元・エリ−ト官僚みたいな「高度な」お勉強がよくお出来になる皆様方が、
よりによって「遊園地」で全てをパ−にして、
人様に大迷惑かけるってのは、一体どういう気分なんだろうね−?