巨人日本一は、あるアホウのお陰(00/10/30)


 (話題その1)

 衆目の一致するところとして。
 今回の巨人の優勝は、工藤やら江藤やらメイやらの新戦力の加入がなくては無理だった。
 つまり、去年の戦力のままでは、巨人の優勝はなかった。

 その意味でも、企業人としてのナベツネ、勝負師としての長島の判断は正しかったことになるのだけれど、
中でも、最も影響が大きかったのは、工藤がいることのプラス・マイナスだったと思う。
 工藤がダイエ−にいたら、あるいは地元の中日にでも行ってたら、
まあ多分、巨人の優勝はなかったのだろう。

 で、何で工藤がFA宣言したのかと記憶をたどれば、
それは、一年前のダイエ−の偉い人かだれかの、
「君が投げる日はお客が少ない」の一言だった。

 マラソンの中山も、似たような一言でダイエ−辞めたんだけど、
それって、その辺のサラリ−マンが、
プロとして必死に人生のリスクを賭けて戦ってる奴、
特に彼の「業界」で一定の地位を獲得し、
企業にとっても(少なくとも言ってる本人以上に)大きな成果やメリットを出してきてる奴に対しては、
死んでも口にしてはいけない一言だったのだと思う。

 選手のプライドの問題だけじゃなく、
そもそも工藤の活躍を利用して金儲けするのは、オマエ自身の仕事なんだから。

 で、まあ、巨人優勝の陰の立役者は多分、そのアホウなおっさんってことなんだろうね。

 おまけにダイエ−は「自分とこの球場日程をおさえ忘れてた」という、ひで−ミスまでやらかした。


 (話題その2)

 ところで。
 かたや巨人では、杉山捕手の「暴行」事件ってのがあった。

 自業自得とはいえお気の毒って感じがする。
 誰だって、多少、飲み屋でもめたことくらいはあるんじゃ?って気もする。

 でも杉山のビヘイビアって、
見方を変えれば、
バブル期に学校を出て、デカイ組織に入り、何かを勘違いした奴にありがちなパタ−ンだよね。

 けっこう、世代的特徴がある。


 で、ちょっと話は変わるけど、
この「杉山事件」含め、最近のいろんな事件からは、
それぞれの世代が生きた「20世紀」の姿がよく見えるという気がする。

 まあ、若い順に。
 第一は、バブルとともに生まれ育ったガキどもの残虐殺人
 甘やかされすぎとか、夢のもちようがないとか、親がだらしないとか、ゲ−ムのしすぎとか、色々な説がある。
 でも、実は「いじめ」や拝金体質みたいなののル−ツは、
援交やガングロ世代をへて、
ひとまずはバブルキッズ、30歳の杉山くらいにまで遡るんじゃないかと思う。

 で、第二の「杉山事件」は、世の中甘く見てる奴が、たまたま上手く行ってるだけなのを権威や実力と勘違い。弱い奴相手に傲慢に振る舞ったり、札束でほっぺたハタけば何でもできると思いこんでたという、
何だか「あの頃」によくあったようなお話。

 第三は、和歌山保険金殺人
 ここでは「団塊」と「新人類」に挟まれた、40位の、僕たちの世代が主人公。
 「団塊」のお兄さんのマネばかりで、「ゴルフ」といえば「ゴルフ」、
「マイホ−ム」といえば「マイホ−ム」。
 信じる価値があやふやで、別に彼らへのあこがれもないけど、強く否定する元気もない。
 一方で、ジコチュ−で楽してもうけたいみたいな気分は、下の世代だけでなく、高度成長とともに育った僕たちにも共通している。
 実際、積み木崩しとか、学校崩壊のム−ドとかはその頃からもあった。

 第四に、藤島部屋騒動
 もちろん主人公は、戦後の復興から学生運動、そしてその後の「転向」みたいな時代を生きた「団塊の世代」。
 この世代は、尊敬できる人と下らない奴が、1:5位の割合で、かなりはっきりしてきているというのが僕の印象だな。
 藤島親方に限らず、守りに入った「団塊」ってホントみっともない。(多分、若い人たちから見ても同じだと思う)
 「事件」には、そんな彼らが、今だに社会との折り合いの中で混乱し、ついに崩壊だか二極分裂だかに至る、みたいな感じがよく出てる。
 で、そんな小心者がそこそこエライ人になって、管理職や中間管理職として、ダイエ−の某氏みたいな振る舞いをしてるケ−スが多いんだろうな。

 そして最後は、倒産寸前の大企業トップの自殺
 主人公は、昭和のはじまり前後から、円谷選手の世代だ。
 これって、仕事への責任感が強すぎるという意味では殉死。
 でも結果は最悪の現場放棄にしかなってないんだよね。
 この世代には、「国家」や「仕事」と個人のアイデンティティ−を同一視してしまう生真面目さと、自らがやってきたことへの虚無感、あるいは終戦に次ぐ第二の変革への弱気・戸惑いみたいなものが同居してるって感じがする。

 まあ世紀末の変革期の中で全ての世代が迷ってるし、疲れ切っている訳だけど、
こんな風に最近のいろんな事件には、それぞれが生きた20世紀ってものが、けっこう色濃くにじみ出てるって思いません?


 (話題その3)

 で、話を戻すと。

 まあ、そんなこんなの中で、少なくとも今年、特にダイエ−の選手はよくやったよ。

 でも。
 戦前生まれの長島さんって、やっぱり本当にナベツネに使い捨てにされるまでやるつもりなんだろうな。
 (別に、殉職することないのにと思うけど)

 それと王さんって、ホントに立派な人だな。
 (今回も給料、下がるんだろうか?)

 まあ、本当はスポ−ツの世界くらいには、もちっとすっきりと
「よしっ、これから新しい世紀だぜ、気分切り替えて頑張るか!」って感じの
元気が出る話題を提供してもらいたかったんだけどね。

 何だか、世紀末的ON対決って感じだったけど、
全体的感想を言えば、
21世紀になっても当分、20世紀って続くんだろうな−っていうような、
何となく、うら寂しげな思いが残った。