今里新地の風景(00/6/16) 



 今週の話題は何といっても「南北首脳会談」。金正日サイドの演出が光りましたね。
 わざとなのか準備の都合なのか日程を遅らせたことや、服装、会談への欠席など、結構、「礼を失しているんじゃ?」と思うような所もあったけど。
 専門家(?)は「素晴らしい気配り」だとばかり褒めちぎっていましたが、まあ、民族や習慣や業界が違うので、その辺のニュアンスは分かりません。
 
 ともかく金正日さんは、これで国際社会を一気に見方につけました。
 ホ−ムゲ−ムだったこととあわせ、戦略的にはやはり直前の北京訪問が大きかったですね。
 防衛庁および軍需産業(?)関係の皆さんは、今ごろ真っ青になってることでしょう。
 あれだけ頭の回転のいい人の外交デビュ−が今ごろになったのは、国内事情によるものなのか、それとももしかして、本人の体調によるものなのでしょうか。

 金大中さんの「忍耐力」や「誠意」も光りました。
 (「一週間でちっとはできる気になるかもしれないハングル講座」で、帰国後の空港でのスピ−チをとりあげてます)
 まあ、何がどうなるか分からない時代だからこそ、政治家としてブレないものをもってるって本当に強い。
 政治の力ってものを再認識しました。
 と同時に、何だかわが国の現状にお寒いものも感じます。
 衆院選なんて、まったくどこかにすっ飛んでしまったような一週間でした。


 とにかく、画面を通して、「世紀のショ-」を堪能させてもらいました。 
 感動するとともに、日本人としてはようやく肩の荷がおりたような気がしました。

 「ショー」の成功を見届けるように、皇太后が逝去されたのも印象的でした。
 戦後が終わったという感じもしました。

 さて、この間の「南北報道」では、一躍、大阪の生野区が脚光をあびました。
 そもそもは大阪と済州島との航路が一番早くできた(当時はそれしかなかった)ことによるのだそうですが、小学校によっては、クラスの半分近くが韓国や北朝鮮の関係者という、「大阪ならでは」の場所です。
 鶴橋や御幸通商店街には連日、テレビカメラがおしよせ、大騒ぎしている人たちを映し出していました。
 月に何回かは行く大好きな場所なのですが、この間はやっぱり日本人はお呼びじゃない。
 ご本人たち同志でおおいに盛り上がって下さいと「自粛」を決め込んでいました。

 で、ようやく金曜日(会談は火〜木曜)になって、鶴橋とならぶもう一つの歓楽街「今里新地」に行ってみました。
 顔見知りのラウンジのような店に入ったのですが、時間が早かったので、お客は僕たちともう一組だけ。
 さっそく「金正日状態」となり、7人の美女その他の女性が来てくれました。
 元・在日の一人をのぞき、あとは皆、現地からの人たち。


 で、早速、「いや-よかったね-、感動したよ」みたいなこと言ったのですが、反応は意外と冷静でシレッとしてた。
 「握手した日は店、どうだった?」ってママに聞いても、「いつもと一緒やわ-」でおしまい。
 「でもみんな、うれしかったでしょ」って言ったら、「まあね、でもあんまり関係ないわ」って事でした。

 7人の女性にきいてみると、やっぱり年代(統一時代を知っているか否か)や離散家族の有無によって、じぇんじぇん思いが違うみたいね。
 そもそも韓国でも若い人たちのかなりの割合は、日本同様、政治や「お上」のすることにあんまり関心はない。
 もちろん、さすがに今回の大事件に関しては、変わっていくことへの希望や不安を感じる人、
あるいは(教育も含め「北」がいかに悪いかという情報ばかりを与えられてきた訳だから)
当分は意識が混乱したままという人も多いと思うけど。
 (徴兵制はどうなるんだろうね?)

 ともかく今夜については、皆、あまりにも淡々としてて拍子抜けでしたが、まあ実際はそんなものなのかも知れません。
 以前、たまたまベルリンの壁崩壊の一週間後にヨ−ロッパ出張があって、一緒に行った人たちと現地を訪れたのですが、その時も観光客みたいなの、僕たちだけでした。

 で、帰りに自販機で千円使ったら、おつりにあの有名な(!)「変造500ウォン硬貨」が出てきました。
 少し肩の荷が軽くなった記念品にしようと思います。

 ソウルやピョンヤンの街も、一人一人の色んな現実の中で、もう冷静さを取り戻してるんだろうなって想像しました。